2021.1.31

ジャナ・デリオンのワニ町シリーズの第4巻が刊行されるとのニュースを聞き、1巻読んでから読もう読もうと思って手を付けていなかった2巻と3巻を読んだ。おもしろい。1巻であんまり覚えてないことも、2,3巻でさりげなく説明してくれるからありがたい。本シリーズはFBIの凄腕捜査官、フォーチュンが仕事で暴れすぎて(?)ミスをやらかし、命を狙われることになる。ほとぼりが冷めるまで、元ミスコンクイーンの司書としてシンフルという田舎町で身を潜めているよう言われる。身を潜めていないといけないのに、シンフルについた日に家の裏から死体が発見されて、自分の身を守るため、フォーチュンは、元気すぎるおばあちゃん、アイダ・ベル、ガーティと共に犯人探しを始める。本作はとにかくキャラクターが魅力的。主人公のフォーチュンはもちろん、元気なばばあの2人が最高。ばばあが元気な小説は最高。実はこの2人には秘密がある。いつもはネタバレして感想書いているけど、これは書かないでおく。もし、これから読む人がいたら、あっと驚いて、その後じーんとくる展開を堪能してほしい。

お気に入りのカフェで読んでて笑いをこらえるのが大変だった本は、このシリーズ。ちなみに2巻のレディ・ガガのくだり。こんなん笑うわ。基本コメディタッチで構えることなく気軽に読める作品だと思うんだけど、実はフォーチュンが両親との関係、特に父親との関係に葛藤を抱えていたりというくだりや、アイダ・ベルたちの秘密とか、ずしっとくるものもある。あとは、フェミニズムの観点から読んでもおもしろい作品。

個人的には、フォーチュンが素晴らしいというか、この作品の田舎という町に対する視線が素晴らしいと思う。田舎町特有の狭い人間関係、秘密はすぐにひろがり、よけいな噂に悩まされという描写は3冊通して書かれている。フォーチュンもその視野の狭さや偏った考え方にうんざりはするが、決してシンフルの人を見下さない。フォーチュンはFBIの仕事が好きで、仕事に誇りを持っているが、訳あって自分が最も苦手とする、人間関係を重視する町で過ごさなければならなくなる。もし自分だったら、なんで自分がこんな田舎でって腐って、他の人たちを馬鹿にすることで自分のプライドを保とうとするけど、フォーチュンは決してそんなことをしない。閉鎖的な町にうんざりはするけど、そこで暮らす人たちに共感を覚えていく。敵だろうと、大切な人を亡くせばお悔みの一言を述べ、保安官として働くカーターの境遇、子どもの頃から過ごした町で知り合いを捜査したり逮捕しなければいけないことに、心を痛める。フォーチュン、めちゃめちゃ優しい。公平さが素晴らしい。FBIで仕事をしていたころは個人的な人間関係なんて考えたこともなかったが、シンフルで過ごすようになり友達もできるし、いいなと思う男性も出てくる。そして、彼女自身そんな自分の変化にとまどいながらも、シンフルでの暮らしを気に入っていく様子がいい。といって、3巻でまだシンフルに来て2週間という展開の速さ。その短い間にフォーチュン、どんだけ事件に巻き込まれるんだ。