2023.3.28

「セイントフランシス」よかった。主人公は34歳のブリジット。大学は1年で中退、独身で誇れる仕事はしていない。夏の間だけフランシスのナニーのアルバイトをすることになる。フランシスにはママとマミーと呼ぶ、レズビアンカップル両親がいる。

生理をここまで書いた作品は初めてでは。SEXの後、起きたら顔に経血が付いていたり、相手の顔にもついていたり、突然生理になって下着を汚してしまったり、タンポンでトイレを詰まらせたり、ボトムスに経血が付いていないかお尻を鏡で確認したり、月1であるものだから、トラブルも多い。それを日常にあるものとして書いているのがいい。出産後は尿漏れするし、中絶後は不正出血もある。赤ちゃんは夜泣きしてとにかく泣き止まないし、中絶後に出てくる胎児はスナップエンドウの豆くらいの大きさ。女の股から出てくるあれこれと、それに伴う困難さを、わずらわしさを、感情をなかったことにしない。

公開時期も近いし、主人公の設定も近いから比べちゃうんだけど「わたしは最悪。」より好み。前にも書いたけど、ユリヤは最悪じゃないよ。ブリジットはさ、なんか、分かるなって部分が多くて、「30代で何をすべきか」って検索したり、親から子どもはまだかって言われたり、ナニーしていることを元同級生に見下されたり、独身で子どもがいなくて誇れる仕事もしていないことがコンプレックスだったり、でも、子どもが欲しいかどうかわからなかったり。34歳の自分は最悪だった。だから、ブリジットに最悪じゃないって言ってあげたいけど言い切れなくて、でも、ブリジットは最悪じゃない。「ママがいじめられたときに怒ってくれた」とフランシスが言う。マヤが差別を受けたときにブリジットは怒って、言い返す。この後のマヤの態度もセリフもかっこよかった。マヤが産後うつになって、アニーとのけんかが絶えなくて、フランシスは2人が離婚するかもしれないって不安になる。ブリジットはその不安に寄り添ってあげる。家に帰ろうとしたら2人のけんかする声が外まで聞こえて、「もう少し歩こうか」ってフランシスに声をかける。ブリジットの対応は大人として子どもを守っていたと思う。

アニーが産後うつのマヤとうまくいかなくて、マヤの浮気を疑っている中で、楽しそうに花火から帰ってきたマヤとブリジットに八つ当たりしてしまうシーン。椅子についていた血の跡が原因でマヤの浮気を疑って、そしたらブリジットがそれは自分だって、中絶したら不正出血があってと説明する。その後アニーの前で号泣しちゃうんだよね。ジェイスの前では感情を表せなかったのは、自分でどう感じていいか分からなかったからなのかな。アニーも自分が黒人だから、マヤに子どもを預けてタクシーに乗ったらナニーと勘違いされたって泣いて、みんな、誰にも言えずにいろいろ抱えているねと思ったら、泣いてしまった。

日本ではパブリックコメントが多すぎるからという意味の分からない理由で見送りになった経口中絶薬。ブリジットも薬飲んでたよね。「スワロウ」でもそうだった。経口薬だから副作用はないわけではなくて、ブリジットは具合悪そうだし、不正出血も続くし、でも、手術よりは女性の体に負担がないはずだと思う。あと、ブリジットは病院でエコーをとるんだけど、技師が「あなたは見なくてもいい」と伝えるシーンがある。それみて「わたしたちのブルース」で、同じく中絶で病院に行ったらエコーとって、それを女性に見せるってシーンがあったの思い出した。エコーをとるのは胎児の状態を確認するためで、望まないなら見せる必要ないと思う。

先週までは東京行ったらどこ行こうとうきうきしてパン屋や本屋調べていたいのに、そんなことしている場合じゃないんじゃないかという気持ちに襲われている。

毎週月曜日はラジオ深夜便で毎週日曜日に放送される「ラジオ文芸館」を聞き逃しで聞く。昨日も聞いていたら、始まる前にこれからの放送予定を案内していて、その中に「絶望名言」がある。え、なんでもう?絶望名言は毎月最終日曜日だから、もう3月最終日曜日なの?週末もう4月だ。早い。え、もう4月なの?ちなみに前も聞いた「樋口一葉

そういえば、途中からあんまりおもしろくなくなってきた「今夜すき焼きだよ」最終回見た。なんか、アロマンティックのともこが、結婚出産したあいこと子どもの面倒をみる展開はどうなんだろう。ともこがあいこの結婚は嬉しいけど、一緒に暮らせなくなるのはさみしいって、でもその気持ちは両立するって描写とかよかったのに、何にも欠けてないに感動もしたんだけど、結局異性愛の方にいいように回収されてしまった気がする。赤ちゃんの夜泣きはひどいけど、ゆきは協力的だし、あいこの育児と仕事の両立は順調だし、ともこも高い家賃の部屋に住めるし、ハッピーエンドで終わったけど、終わり方ファンタジーでちょっと不満。あいこが家事苦手なのも分かるし、家事代行頼むのも賛成なんだけど、やっぱり最低限は出来た方がいいと思う。