2022.1.17

新作DVDを数本見たので、感想をまとめておく。感想にはネタバレあり。

「すべてが変わった日」ジョージとマーガレットの夫妻は、モンタナ州で息子夫婦と生まれたばかりの孫のジミーと幸せに暮らしていた。しかし、息子が事故で亡くなり、数年後妻のローナがドニー・ウィーボーイという青年と再婚し、ジミーを連れて引っ越してしまう。マーガレットはドニーが、ジミーとマーガレットに暴力をふるっていることを知り、彼らが住んでいるアパートを訪ねるが、すでにドニーの実家のあるノースダコタに引っ越した後だった。ジョージとマーガレットは、ジミーを取り戻すためノースダコタへ向かう。

ジミーの実家の様子を見て、去年読んだ「エデュケーション」という本を思い出した。著者のタラ・ウェストーバーは偏った考え方を持つ両親に育てられ、学校に通わせてもらえず病院に行かせてもらえない。支配的な父親が絶対の環境で育つ。兄の一人が大学進学したのを機に、タラも大学へ進学。勉強していくことで、彼女は自分自身の人生を取り戻していくノンフィクションだ。ジミーの実家は母親と、ジミーの他に3人の兄弟がいる。ここでは母親が絶対的な権力を持っている。その家でローナもジミーも怯えたように暮らしている。この家族の話の通じなさそうな雰囲気が怖い。兄弟の内2人は実家で母親と暮らし、1人は少し離れた場所で暮らし、ドニーは州を越えて暮らしていたが、戻って来た。この実家との距離が、兄弟の母親に対する服従心とが比例して書かれているように思った。ジョージとマーガレットは、家族が寝静まった後ジミーを連れてくると約束したローナをモーテルの部屋で待っていたが、現れたのは母親と兄弟4人。狭い町ではよそ者の行動は筒抜けだった。銃を取り出したジョージに、もう銃を撃てなくするため、持参した斧でジョージの指を切り落とせとドニーに命令する母親。何の疑いも持たずにジョージを取り押さえるのは実家に住む2人の兄弟。斧を渡されたドニーは動揺しためらいを見せるが、母親に逆らえず、ジョージの指を切り落とす。母親の支配力が怖い。ドニーがなぜ実家に戻ったのかは明らかにされていないんだけど、ローナが逃げるのをためらうのに「ドニーは一度逃げたから、二度目は許されない」って言う。ドニーは実家から逃げたかったんだね。でも、実家の育て方しか知らなかったから、ローナやジミーに対して暴力でしか向き合えなかったのかもしれない。実家から少し離れて暮らす一人の兄弟は、ドニーよりは母親寄りなんだけど、実家で暮らす2人の兄弟ほど盲目的ではない印象を受ける。モンタナを出る前に、ローナがマーガレットに相談できていればと思うんだけど、実はこの2人は息子が生きていたころからうまくいっていなくて、マーガレットは頑固で自分が正しいと思っているから、ローナがちょっと気後れしている感じがうかがえた。ちょっとしたシーンなんだけど、ローナの逃げ場をなくして、物語を展開させるうまい演出と思った。

「明日に向かって笑え!」2001年のアルゼンチン。不況にあえぐ田舎町で、元有名サッカー選手のフェルミンとその妻リディア、友人のアントニオは、使われなくなった工場を買い取り、共同農業組合を立ち上げようとする。そのため、地域の住民から出資金を募るが、そのお金を銀行に預けた翌日、金融危機で口座が凍結されてしまう。さらにこの事態を悪用し弁護士のマンシーにお金を全部だまし取られてしまう。失意のフェルミンにさらに悲劇が襲う。交通事故でリディアが亡くなってしまうのだ。自身も大けが追ったフェルミンは、ショックのあまり家から出られなくなってしまう。1年後、マンシーが何もない土地にプール用の穴を掘っているとの情報を得たアントニオは、それが金を隠すためではないかと思い、住民たちに自分たちのお金を取り戻す計画を持ち掛ける。

面白く見られた。金庫の安全装置が電気で動いていて、その充電が50%を切ったらマンシーの携帯に通知が行くということを利用して、フェルミンたちが安全装置につながる電線を切って、通知を聞いたマンシーが金庫に来る頃には、電線を繋げて充電を戻すということを繰り返す。電気の供給が不安定なこともあり、電線の方のとトラブルと思い込んだマンシーは、フェルミンたちの思惑通り、安全装置の電源を切ることに。それによって無事にお金を取り戻すことが出来るんだけど、この案の元々の発案者の男性が、200万ドルをもって逃げてしまう。彼は、町の有力者で、運送業を営むカルメンの一人息子。カルメンはこの息子が働きもせず怠けているだけの放蕩息子と決めつけている。作戦会議をしていて息子が発言しても、彼の意見は役に立たないと決めつけ、聞く耳も持たない。周りはそれをいさめ、息子の意見を聞くことで、結果、この案を思いつく。すぐに戻ってくるだろうと住民は思っていたが、結局息子は戻ってこなかった。どこかで幸せに暮らしているといい。

白頭山大噴火」北朝鮮と中国の国境付近にある白頭山が噴火し、朝鮮半島は大被害を受ける。政府から助言を求められた教授のカンは、まだ火山の下に巨大なマグマ溜まりがあり、それが噴火したら半島崩壊が免れないと指摘。噴火を食い止めるためには、核でマグマ溜まりに穴をあけ、圧を下げる案を提案する。その実行に挑むのは韓国軍爆発物処理班のチョ大尉。彼らの部隊は、核の鍵を握る、北朝鮮工作員のリ・ジュンピョンに接触を図る。

これを借りたときはトンガの噴火が起きてなくて、再生する時にはすでに噴火していた。トンガでの噴火で、日本にも津波が来ると警報があって、そしたら朝鮮半島で噴火があったら、さらに被害があるんだろうなとか考えてしまった。映画の方は、いろいろ盛り込みすぎかなと思ったけど面白かった。イ・ビョンホン演じるリ・ジュンピョンが食えないやつで、ようやく除隊できると喜んでいたのに呼び戻されて妊娠中の妻のアメリ疎開と引き換えに嫌々仕事を引き受けたチョ大尉とバディっぽくなっていくのも面白かった。このあたりは、韓国映画お得意の描写だから、やっぱりうまないなあと思って見ていた。チョの部隊は、元々機械に核を入れる作業をするだけの班だったんだけど、実行部隊の乗った飛行機がエンジントラブルによって墜落、全滅したことから、急遽核を運んで爆発させるところまで任されてしまった。だから、慣れていなくてリ・ジョンピンに振り回されたり、ミスしたりが続くんだけど、全然イライラせずに笑ってみることができた。イ・ビョンホンの食えなさもいいんだけど、チョ大尉を演じているハ・ジョンウの絶対に裏をかいてやるって態度も負けてなくて、2人のやりとりが本当に面白かった。腕っぷしの強い役が多いマ・ドンソクは、今作では教授役。韓国語分からなくてとぼけた振りするのとかかわいかった。「秘密の森2」、「恋愛ワードを検索してください」のチョン・ヘジンが出ているので期待していたんだけど、あまり活躍の場はなし。カン教授のシミレーションでの成功率が低くかったんだけど、カンのひらめきで53%まで上がる。その案をにためらう大統領に、大統領の支持率より高いと言い放つシーンは笑ってしまった。