2021.3.14

「あのこは貴族」本を読み終わった。本には本の、映画には映画のよさがあって、両方よかったけど、選べと言われれば、平田里英がいるから、映画だ。本では「平田佳代」という名前で、基本設定と性格は変わらないが、私は映画の2ケツと、「すいませーん、ビール2つ」「声でか」のやりとりがとてつもなく好きなので、映画だ。感想には本と映画、両方のネタバレがあります。

本ではやはり、文字の強さを思った。美紀と逸子が、華子が来るまで2人で話すシーンは、映画では逸子の「私嫌なんです」のセリフが印象的で、それを石橋静河さんが演じることでこちらにも響いた。本では、逸子のセリフは実体験として美紀が語っていて、逸子は歌舞伎から引用して女の義理を語る。結構な分量で、これをそのまま映像にしたらだれると思うし、美紀が実体験として語ることで実感を持って伝わるし、歌舞伎の引用という教養が必要な語りは逸子ならではで説得力がある。ここは映画のシーンが好きだったけど、本もよかった。あと、本で、美紀が華子と出会ったことで幸一郎のことをばっさり切ろうと決意するのが、美紀の言葉として聞けてよかったと思った。「大学時代のコンプレックスから自分を解放しよう」ってくだりがいい。しかも、全く連絡しなくなった美紀に幸一郎が未練たらたらでメールしてくるとか、それをやめさせるために美紀と佳代が相談してこれしかないと決めた方法が、華子の結婚式に参加することだったり(華子から美紀出席の相談を受けた逸子が、美紀を問い詰め、美紀が逸子にだけ真相を話すのもいい)、そのときの幸一郎のショックと、華子の冷静な対応だったり、本にしかない場面が面白かった。これ、映画に入れてくれても良かったのにと思ったんだけど。幸一郎に関しては、本だと印象が薄い。でも映画は高良さんが演じることで、やはりインパクトが残る。

映画でもう一つ好きなシーンが、華子が美紀の部屋に行って「美紀さんが選んだものだから」と言うシーン。映画ではタクシーに乗っていた華子が、偶然自転車をこいでいる美紀を見つけ声をかけるが、本では、幸一郎との結婚生活に悩んでいた華子が美紀に相談したいことがあると直接連絡をとる。本ではここで2人は沢山話す。自分の気持ちを表現できないと言う華子に、できてるよと美紀が言う言葉がいい。ただ、ここも美紀と逸子のシーン同様、まんま映像にしたらくどいなって思う。そこを、偶然会って、たぶん近くだから美紀の部屋に寄って、華子のセリフがあって、ベランダから見えるかけた東京タワーが効く。見事な映像への翻訳だと思う。だって、華子から会いたいって連絡したら、2人の関係性だと、美紀の部屋にって流れにはならないしね。華子の離婚への決意を後押しする大事なシーンが、本ならでは、映画ならではでそれぞれ表現されていた。