2023.5.11

「ケチる貴方」を読んだ。感想にはネタバレあり。超絶冷え性の佐藤。あらゆる温活を試したが効果はなし。会社で新人教育を任された佐藤。何事も省エネ、最低限のことだけ教えて、自分で勉強した知識を教える必要はないという考え。ある時佐藤は、それまで手伝ったことがなかった、自分の仕事とは関係のない雑事を手伝ったことで、自分の体温が上がることを知る。

面白かった。佐藤は寒いから暖房をつけてほしいと言えないし、そこまでの厚着もしない。なぜなら佐藤は体格がよくて、寒いと言えるのは細身の体形だけだと思っているからだ。体格による偏見。佐藤は、入社当時、同期の男性社員には頼まず自分にばかりコピーをとらせる上司に抗議したころがある。はっきり物が言える性格なので、寒いと言える子どもだったんじゃないかな。でも、子どもの頃から体格がよかったから、大きいのに寒いのって笑われたとか、そういう経験があって、今は言えないのかなって思った。見た目の偏見ってあるじゃない。子どもの頃眼鏡かけてたら、真面目って言われた経験ある人多いと思う。私もその一人。そんなわけあるかって、目が悪いだけだって。

佐藤はさっき書いた上司への抗議と、入社当時社内が忙しくてあまり面倒を見てもらえなかったことと、元々社交的ではない性格、そして数少ない女性であることもあり、社内で浮いた存在になる。自己学習で習得した技術や、取引先ごとの癖や、契約を結ぶ際のコツなんかを、エクセルにまとめているが、それを社内で共有するつもりは一切ない。新人2人は男性で、いずれ自分より出世して高い給料をもらうんだから、自分を守るためにも教えるつもりはなかった。しかし、ある時、新人2人に押し付けられた雑事が、どうやっても2人では間に合いそうになく、見るに見かねて手伝ってしまう。するとその夜、体温が上がり、暑くて寝られない状態になる。常に体を縮め、体が冷えることを警戒していた佐藤は、その開放感に感動する。雑事を引き受けると体温が上がることを知った佐藤は、あらゆる雑事を引き受け、退職者の仕事も引き継ぎ、新人2人に秘密にしていたエクセルも共有する。佐藤が文句も言わずに仕事を引き受けてくれると知った職員たちは、いろんなことを佐藤にお願いするようになり、佐藤の残業時間は100時間を超えてしまう。代謝がよくなったせいか、何もせずに8キロやせた佐藤に、同期の男性社員が、他部署の先輩が「誰でもいいから」結婚したいと言っているから、今度の忘年会で紹介すると言ってくる。笑顔で引き受ける佐藤。雑事を引き受けるようになった佐藤に、社員は感謝するどころか、佐藤を雑に扱うようになる。誰でもできるような雑事をしていると、雑に扱われるというのは、仕事に限らず、家事を引き受けている女性でも、身に覚えがあることだと思う。

忘年会当日、自ら買って出た窓ふきを終えた佐藤は、誰もいなくなった職場でパソコンを開いて仕事を始める。今日中にやらないとならない仕事をわざと残しておいたのだ。その場で幹事に忘年会欠席の連絡を入れる。同期の男性から着信があるが、無視。佐藤はどこかでもう限界だと気が付いていたんだろうか、仕事を終えた後、トイレで倒れてしまう。医師は過労によるストレスと診断し、あなたは頻脈だと告げる。それまでの健康診断結果によると、佐藤はぎりぎりひっかからないけど、徐脈だった。最後は、病院のロビーで脈を測る佐藤の姿で終わるんだけど、つまり、人に親切にしたから体温が上がったのではなくて、雑事を引き受けたストレスで脈が速くなって、体温が上がったってことなのかな?このあたりはよくわからなかったけど、佐藤はもうなんでもかんでも引き受けることはない気がする。脈までケチっていたのかと自嘲する佐藤だけど、それによって自分を守っていたんじゃないかと思った。浮いた存在ではあったけど、雑に扱われることはなかったし。

短いんだけど、ルッキズムとか女性差別とかも書かれていて、よかった。たしか、確か文化系トークラジオLIFEの新年会で紹介されていたような気がする。でも調べてみたら、2022年の本を紹介するがテーマで、本書は今年出版だから違うかも。

「WAVE MAKERS~選挙の人々~」は、セクハラの問題を追及する展開に。ヤーチンの話を聞く、ウェンファンの姿勢が素晴らしい。ヤーチンは、自分は恋愛だったって言うけど、教授と生徒の関係から、議員と秘書の関係になって、そこには権力勾配が絶対に存在しているし、チャンツは立候補を餌に退職を引き止めたり、転職できないように方々に圧力掛けたり、不倫がばれたらヤーチンが悪く言われるし、対等な立場での恋愛とは言えないよね。ヤーチンが職場で受けたセクハラがリンの知るところとなり、リンは然るべき機関に訴えようとするんだけど、またもや大局を見るよう諭され、加害者を解雇することで決着をつけようとする。ウェンファンは大局を見ろという言葉にうんざりしいるし、リンも死刑制度に続きまたかと憤るが、選挙で勝つことを考えるとそうせざるを得ないのも分かっている。セクハラを軽く扱おうとする男性陣に、怒ってくれるリンに救われる。リンもウェンファンもかっこいい。こういう上司の元で働きたかった。最初の上司でその後のキャリアが決まるって、真実だと思う。

このドラマは、名前の字幕がカタカナ表記なんだよね。「バッド・キッズ」は漢字。「瑯琊榜」も漢字だったし、アマプラは漢字、ネトフリはカタカナなのか。漢字の方が覚えやすいんだよな。

「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説になった話」を読み始める。タイトルまんまのお話らしい。フォローはしていないけど、ツイッターでお見かけしたことはあって、東欧映画を紹介するスペースも聞いたことがある。元々言語に興味があって、たまたま見たルーマニア映画が言語と思索の関係を取り扱っていたことに衝撃を受けて、ルーマニア語を学び始める。引きこもる前は本も読んでいたけど、本を読むというのは能動的な行動で、鬱になると難しいらしく、再生ボタンを押せば流れる映画を見ることの方ができるらしい。私は鬱ではないし、患ったこともないので気軽に分かるとは言ってはいけないけど、本が読めなくなる体験はよくするので、うん、言っちゃうけど、分かる。映画もあほみたいに見ていた時期もあるし、あの時映画館でこんなに映画を見る自分は人とは違うって自意識は、確実にあった(もちろん、もっと見ている人はざらにいるけど)。著者の済東さんは、他の人とは違うことをやっている自分かっこいいって自意識をもっと大切にしてもいいんじゃないかと書く。その自意識でルーマニア語で小説書くまで行った人が言うと、説得力がある。あ、急に思い出したけど、「行く、行った、行ってしまった」読むきっかけは、済東さんのつぶやきだった気がする。たしか。

この本で、韓国映画、ドラマから入って、韓国語を勉強するようになった中年女性の話題が出るけど、周りにも入るんだよね。先月の東京のイベントであった女性も、韓国ドラマ好きが高じて韓国語を勉強し始めたと言っていた。オンラインでは1度一緒になったことがあって、その時紹介してもらった韓国ドラマ見たので、それを伝えようと思ったら、相手の方が先に声掛けてくれた。私印象薄いし、これといった特徴もない顔立ち、体型なので、人に覚えてもらうの時間かかるんだよね。なので、1度オンラインで会っただけで覚えてもらっていたのは、驚いた。嬉しかったんだけど、嬉しさより驚きが勝ってしまって、覚えててもらえてうれしいと伝えられなかった。こういうの伝えられる人が、すごいと思う。軽くパニックになっちゃう。好きが高じてやっちゃうっていいよね。

「大奥」の田沼意次、イメージ違うな。松下さんだと物腰柔らかな人になりそうだけど、もっと食えなさがほしい。でも、ドラマは楽しみ。