2021.2.22

「今宵、212号室で」を見た。感想にはネタバレがあります。

どんな話か知らず、このジャケットのポスター見たことあるな、たしかあの映画館で上映してたなというくらいで見た。主人公のマリアは大学講師で結婚20年目。夫のリシャールとは倦怠期。若い生徒と浮気をしたことがばれてしまい、怒ったリシャールと距離を置くため、マンションの向かいのホテル、212号室に部屋を取る。窓からリシャールの様子を見ているマリア。そこに、なぜか25歳のリシャールが現れる。続いて、リシャールの元カノのピアノ教師イレーヌ、マリアの過去の浮気相手の面々、マリアのイマジナリーフレンドらしき歌手も現れて。というお話。不思議な味わいの映画だったけど、おもしろかった。

ジェーン・スーさんと高橋芳朗さんがウェブで連載している「愛と教養のラブコメ映画講座」でも取り上げてて、好きでよく読んでるんだけど、2人というか、特にスーさんがリシャールに怒ってて、読んでて確かに思ったんだけど、見ているときは、イレーヌに肩入れしていた。

イレーヌはリシャールが15,6歳からマリアと結婚する25くらいまでの間、関係を持っていた。マリアと結婚すると聞いてあっさりと受け入れる。でも、実はずっと引きずっているのが分かる。20年後、当時の40代の姿で現れて、リシャールに迫り、子供が欲しかったとうこともわかる。マリアと2人で、今のイレーヌに会いに行くシーンがある。現在60代のイレーヌはパリを離れ、海辺の家で女性パートナーと暮らしている。40代のイレーヌはそれが受け入れられない。今のイレーヌが幸せだといっても信じない。マリアにどっちが幸せそうに見えるか聞くが、言わずもがなといった感じのマリア。現在のイレーヌは幸せそうに見える。40代のイレーヌはそれでも不満の様子。未来の自分が幸せだと言っても、その未来が今の自分から見て納得のいくものではない場合、そう簡単には受けいられないものなんだなと。あの時リシャールに気持ちを伝えていたら、どうなっていたかはわからないけど、イレーヌはずっと後悔していたんだろう。でも、プライドが邪魔をして素直になれなかった。中年になってから、あの時ああしておけばよかったなんてたくさんあるもんねと共感した。

主人公夫妻に話を戻すと、マリアはなかなかな人数と浮気してて、しかも全然反省していないし、悪いことしたって感じもないんだけど、演じているキアラ・マストロヤンニの魅力のおかげか、憎めない許しちゃうキャラになっている。見ながら誰かに似ているなと思っていたら、カトリーヌ・ドヌーヴの娘さんだった。似てる。マリアはリシャールと別れる気なかったと思う。あったら、向かいのホテルに泊まらない気がする。浮気相手が若い男ばっかりだったのは、若いリシャールがよかったというか、年取って変わってしまったリシャールに不満で、その不満の筆頭がセックスレスだったんだろう。25歳のリシャールが現れてすぐにやっちゃうあたりにそれが表れている。受け入れるの早すぎる。中年女性の性欲を馬鹿にせず、否定せず、コミカルにみせてくれたのがよかった。リシャールはリシャールで年取った自分の体に自信が持てなくなっていてい、でもそれをマリアに言わずに、イレーヌに言うって。このあたりはスーさんが講座でびしっと指摘しているので、読んでみて。

ラストは、ハッピーエンドかなと思う。設定がまあまあゆるいから、気になる人はだめかもしれないけど、私は楽しめた。