2021.11.27

「大コメ騒動」を見た。ネタバレあり。大正七年、富山で起こった主婦たちによる米騒動。シベリア出兵を控え、兵隊たちの米を確保するためコメの価格が上昇。漁業を生業とする、主人公いとが住む村では、漁業ができない季節には漁師である男たちが出稼ぎに行く。その間も家のことをして仕事もして子供たちを食べさせていくのは女の仕事だ。実際にはその間だけじゃないけど、ずっとだけど。重たい米俵を海まで運び、1日の給料は22銭。それで家族を食べさせられるだけの米が買えていたのに、米の値段は日々上がっていく。どこに訴えても話を聞いてくれないため、女たちは積み出しを阻止すべく、行動する。

女たち、みんな疲れている。仕事して家のことやって子ども食べさせて、とにかく疲れている。全員不愛想なのがいい。疲れているのにいきいきにこにこしていられるか。いとは、字が読める。子どもの頃から勉強ができて、女学校に行くと周りから思われていたけど、17で嫁に行かされた。夫は字なんか読めても意味がないというし、周りの女たちも頭がよくても食べていけないとからかう。でも、いとが字を読めるお陰で、新聞からシベリア出兵が近いから米の価格が上がっていること、それはさらに上がること、だから今手を打たないといけないということが分かる。女たちを率いるのは清んさのおばばだ。おばばが来ると聞けば、女たちは何をおいても駆けつける。おばばは女を泣かす亭主を許さない。お祝いには鯛を持って駆け付けてくれる。精神的支えのおばば。警察もそれをわかっていて、おばばを逮捕する。求心力を失った女たちの集団は勢いを失くしていく。そんな中悲しい事件が起こる。夫を海で亡くし、娘のみつと二人暮らしのタエ。タエの家は貧しく、みつも満足に食べることができない。みつは商店の蔵に米を盗みに入るが、積んでいた米俵が崩れ、その下敷きになり亡くなってしまう。勉強がよくできたみつ。たくさん勉強して、沈まない船を造る。漁師になって沢山稼いでお母ちゃんにお腹いっぱい食べさせてやるんだと言うみつに、地元の有力者の黒田は、漁師なんて尊敬されない、みつちゃんはきれいだからもう少し大きくなったら稼ぐ方法があると言う。くっそー。いとは米商店のおかみから騒動から手を引いたら米を安く売ってやると言われ、その話に乗ってしまう。それが知れるところとなり周りの女たちはいとの話を聞かない。しばらくして、おばばが釈放される。塀の中でハンストし、弱り切ったおばばの姿を目にした女たちは再び団結し、積み出しを阻止すべく、海に向かう。これが成功し、政府は米の価格を抑えるようにして、配給もすることになる。最初の積み出し阻止は失敗したけれど、そのことが新聞に載り、同じように米の価格高騰に苦しんでいた他の県にも運動が波及していく。調べてみたら沢山の地域で実施され、炭鉱とかにまで飛び火している。

徹頭徹尾女だけで展開する話だった。男が出ると暴動が起こる、女が出ても何も変わらないと言って、男は行動を起こさない。男は女に甘えている。富山の女たちは強いなんて感心して言う。強くなんてありませんと女は言い返す。家族を食べさせていくため、強くなるしかなかったんですと。不満を言えば、夏木マリの活躍の場面を作ってほしかった。おばばとタキは実は幼馴染で子どもの頃は仲が良かったが、何かがあって仲たがい。それ以来タキはおばばのやることに文句を言っていたが、釈放されたおばばの姿を見て立ちあがるみたいな。安易だな。まあ、素人に考え付くのはこんなもんだよ。本木監督は富山出身。しかも「超高速!参勤交代」も監督している。「殿、利息でござる」とか「武士の家計簿」とか、コメディ時代劇好き。こういうのもっと作ってほしい。