2023.9.4

山田太一脚本の「想い出づくり。」を見始めた。「日曜の夜くらいは」が放送されていた時、「想い出づくり。」の現代版だとドラマ評論家の人が言っていて、見てみたいなと思ってすっかり忘れていたんだけど、「敗者としての東京」に山田太一の名前が出てきて思い出した。

のぶ代、久美子、香織は東京で働く23歳。根本という男に声を掛けられ、入会金7万払うと、安く海外旅行に行けるという契約にサインしてしまう。結局それは詐欺で、3人は入会金をだまし取られてしまう。3人は怪しいとは思いつつも、お金を払ったのは、結婚すると自由がなくなるから、その前に思い切って思い出を作ろうと思ったからだ。同じように騙されたのは、3人と同じ年頃の女性ばかり。1981年の作品で、リアルで「女はクリスマスケーキ、25過ぎたら売れなくなる」というセリフが出てくる。今まで昔はこう言われていたとの説明付きで聞いていたのを、初めてリアルで聞いた。3人はお見合いや紹介してくれた男性を断ったりして、結婚したくないと言うが、その実結婚するしかないと分かっている。

出てくる男の話の通じなさが怖い。のぶ代の元に地方でガソリンスタンドや食堂を営業している中野という男性からの見合いが持ち込まれる。一目でのぶ代を気に入った中野だが、のぶ代は断る。しかし、なんどはっきり拒絶してものぶ代の自宅へお土産を持って現れ、あげく勉強嫌いでぐれぎみの弟、茂を預かり、更生させる。

久美子は静岡出身で、小田急ロマンスカーの客室乗務員をして働いている。勧誘されたときから根本に惹かれてはいたが、突然部屋を訪ねてきた根本にレイプされ、その後もストーカー行為にあう。もう来ないでほしいと何度言っても聞いてもらえない。のぶ代と香織には相談したが、警察には言っていない。どうせ証拠を出せと言われ相手にされないと。

中野も根本も、何度も面と向かってはっきりきっぱり言葉で拒絶されているのに、俺は諦めないと言って会いに来る。話が通じない。あげく、被害者面をする。俺はどうしたらいいんだって、だから、会いに来るなって言ってんじゃん。恐怖でしかない。

香織は福島出身で、商社(かな?)でOLとして働いている。男中心の社会でお茶くみとコピー取りばかり。仕事は生きがいにはならない。課長に退職の意思を伝えたところ、結婚するのかと聞かれる。周りの男や親たちは、何かあれば結婚結婚。女の決断は結婚以外にないと思っているのか。結婚でも転職でもないと伝えると、課長は説教してくる。香織が「結婚する以外他に生きようがないんでしょうか」とぽつりと漏らすと、課長は香織に抱きついてキスをしようとする。後でこの時の行動を課長が説明するんだけど、若い女の子なんて結婚するまで適当に過ごしている、全員同じように見えたが、香織がぽつりと言ったことで、若い女の子の解像度が上がって感動したらしい。それはいいんだけど、なぜそこから抱きついてキスという行動に移るのか理解ができない。あげく、香織が独身だと困るからと、後輩の男性を紹介してくる。この後香織は課長と関係を持つんだけど、これも想い出づくりの一環なのか?

当時の価値観で作られているので、なかなかえぐい。久美子はこの後根本と付き合い、小田急を辞めてスナックに勤める。これは久美子が以前根本に言った、会社辞めさせてスナックで働かせてひもになる気なんでしょ、私はそんな女じゃないって拒否するセリフ、そのまま。久美子はこんなことされて泣き寝入りするような弱い女じゃない、嫌な出来事をもっといい思い出で塗り替えてやると言ってもいて、根本が付きまとってくるから、楽になるにはもう受け入れるしかないみたいな心境なのかな。

久美子は両親によって実家に連れ戻されるんだけど、香織が根本に1ヶ月でも働いて誠意を見せたら、久美子を連れ戻すよう努力するって言ってしまって、根本は働き始める。香織としては、結婚前の想い出作りで大恋愛をしてみたいという気持ちがあり、それを2人に託しているようなセリフもあるんだけど、その男レイプ犯だからね。この件がなければ応援できるのに。

こういうひっかかりはあるけど、楽しめる部分も多い。当時の東京の街の風景とか、3人の衣装もかわいい。3人が明るいうちからビール飲んだり、仲良くなっていくのもいい。後、若いときの田中裕子が蒼井優に雰囲気似ていて、「おらおらでひとりいぐも」の配役は見事だったんだなと思った。

週末は涼しかったので久々に家で過ごした。土曜日は結局見なかったDVDを返却に行って、その近くのパン屋のイートインで久々にモーニングでも食べようと思ったら、時間を勘違いしていて早く着きすぎてまだ空いていなかった。家にパンはあるし、食材買って帰って、家でパンを食べた。家事やって、11時過ぎに横になったらそのまま1時間位寝てしまった。やってしまった。最近太ってきたから寝っ転がるのやめようと思っていたのに。本は「祖母姫、ロンドンへ行く!」を読んだ。著者が、ロンドンでお姫様のように過ごしたいという祖母の願いを叶えるために、2人でロンドン旅行。祖母姫が、メンタル強め、自己肯定感高めで、その言動に笑った。「Y2K新書」の後編を聞きながら家事。夕方また散歩に行こうかなと思ったけど、めんどくさくてやめてしまった。

日曜日は久々の朝マックへ。前より店内は空いていて、ドライブスルーが混んでいた。読書して、図書館へ本を受け取りに行く。帰りは少し暑くなっているけど、前ほどではないので歩いて帰る。この日は昼寝をすることなく、夕方にまた散歩へ行けた。ここ数週間落ち込みがひどかったけど、この土日はさほど憂鬱にならずに過ごせた。よかった。ただ、今日の出勤の時、涼しくなっているなと感じて、暑さ言い訳に引き延ばしていたあれこれに手を付けなければと、また落ち込んだ。土日落ち込まないで、夜眠れるっていいね。続けばいいけど。いや、続くわけがないか。問題は何も解決していない。これからどうするのって聞かないでほしい。本当に分からない。

「想い出づくり。」見る前だったか、最近の女性は大学新卒で就職したら、すぐに婚活をはじめて、20代で子どもを産むのが主流になっていると結婚相談所の人がつぶやいていた。年齢だけで見ると、ドラマの頃と同じになっているのか。「想い出づくり。」の頃は結婚したら仕事は辞める。今は働きつづけること前提だろうな。

らじるらじるでFMシアターの「Teko Poko Cafe」を聞いた。不登校の男子高校生がとある出会いから、カフェの開店準備を手伝うことになり、そこは初恋の女の子もいて、というちょっと警戒するあらすじだったんだけど、ルイ山田53世が出演しているので、聞いてみた。ルイ山田53世さんは自身が引きこもっていた数年を、無駄だったって言うんだよね。無駄な時間ってあってはいけない世の中で、その期間があったから今の自分がいるとはならず、無駄だったと言い切った彼の言葉に救われる思いがした。彼が出るなら警戒するような内容ではないのかもと思ったのだ。

主人公の良太は高校2年生。不登校になって3ヵ月。ある日、仙台駅前のストリートピアノでビートルズを弾いていた修平と出会う。修平は元引きこもりで、今は不登校の子どもや、認知症の高齢者が集まれるカフェをオープンさせようとしていた。そのカフェを手伝うことになった良太。そこには中学の時吹奏楽部で一緒だった千春がいた。

良太は父親が好きなビートルズを、サックスで演奏するのが楽しみだったが、高校受験を理由に親に禁止される。入学した高校では、入学早々大学受験の話で、良太はついていけなくなってしまう。元々真面目な良太は、カフェを手伝うとなると、段取りを決めて、効率よくやろうとする。しかし、修平は行き詰ってしまうと、散歩に行くと言って逃げてしまう。高齢のスエコさん(名前うろ覚え)は紙ナプキンを折ることはできるが、それ以外の仕事をやろうとして、それが良太には邪魔にしか思えない。苛立つ良太に千春が話しかけてくる。

千春は中学の時高熱を出したことが原因で耳が聞こえなくなる。それが原因で引きこもっていたが、この場所に救われたという。ここは、Let it be、そのままでいいんだと言ってくれる場所だから。警戒したことの1つが、初恋の女の子が主人公を励ますためだけに存在する書かれ方だったら嫌だなってこと。ここで千春は良太を励ますというより、自分の話をするんだよね。これはよかった。

後よかったのは、修平が変わらないこと。スエコさんに他にできることが見つからないこと(前半でスエコさんにも紙ナプキン折る以外にできることがあるかもしれないって話がある)。それでも、いいと言ってくれること。わかってるんだ、現実世界ではそれじゃだめなこと。役に立たないと、何かできることがないと、お金にならない。だから今の自分を全然肯定できなくて、なんとか肯定できそうなきっかけを探そうとしているから、そのままでいいに泣いてしまうんだよね。「しあわせへの回り道」みたい。あの頃から変わってないんだ。そのままでいいとは思えないくせに、そのままでいいと思いたくて、矛盾している。自分の話になってしまった。まあ、たいていの感想は自分の話になる。良太は自分がビートルズの音楽を演奏するのが好きだってことを思い出して、店でみんなの前で披露する。店は無事にオープンするが、良太が学校に行くことにしたのかは何も語られない。ただ、私は頭が固く、考えが古いのかもしれないけど、良太は高校に行った方がいいと思う。今のところに戻らなくても、通信とかでも。そのままでいいことと、自分が変わっていくこと、変わろうとすることは両立する。そのことを書いたのが「ちむどんどん」だった。「暢子は暢子のままで上等さ」は、素晴らしいメッセージだった。

今日は全然ダメだった。落ち込んでひどかった。月曜日だししょうがない。しょうがないを積み重ねていった先は、考えたくない。ろくなことがないはずだ。努力をしても上手くいかないこともあるけど、努力しないとうまくいかないに決まっている。香織の気持ちが分かる。仕事は生きがいにはならない。私の問題は中年になっても同じような仕事してるってこと。結婚はしないし、ずっとこのまま。香織とのぶ代の父親が、子どもに結婚しろと言うとき、このまま結婚しないで40,50になってみろ、寂しいに決まってるだろうと言う。2人ともそうりゃそうだけどと返すけど、まあ、そうでもないよ。少なくとも私は結婚していないことで寂しさは感じていない。今後、親を亡くした後が問題。でも、これは結婚していても感じる寂しさだよね。